中小企業のなかには、業績が波に乗り始めたところで社員の離職が続き、人材不足に悩まされる会社もあります。離職が続くと会社の成長のチャンスを逃すことにもつながるため、早急な対策が必要です。
今回は、離職が続く会社の共通点と、離職を減らすための仕組みについてお伝えします。
1.離職が続く理由
社員の離職には、将来の活躍を期待していた「辞めてほしくない社員」の離職と、会社に合わないなど「あまり影響のない社員」が辞める場合の2種類の離職があります。ここで悩ましいのは「事業の中心メンバーとして働いてほしい」「リーダーとして活躍してほしい」など、会社の成長を担う人材として期待していた社員ほど、会社が成長期を迎えるタイミングでの離職が多いことです。
離職が続く場合、問題点を知るためにも離職理由を聞くことができれば良いですが、辞めていく社員は本当の離職理由を教えてくれません。
「実家を継ぐ」「違う業界にチャレンジしたい」など、波風を立てない理由を述べて去っていってしまいます。もちろん、本当に家庭の事情や、前向きな転職が理由の場合もありますが、建前に隠された「本当の理由」は共通しています。
それは「自分が会社に大切にされていないと感じている」ことです。
会社が成長期を迎えたとき、経営者は「業績を上げよう」「お客様に良いサービスを提供しよう」と非常に前向きです。しかし、その一方で「会社の社員を守る」という仕組みが手薄になることもあります。
2.離職を減らすために必要な4つの仕組み
離職が続いている会社であっても、「社員のことをとても大切にしている」「目をかけて可愛がっている」という経営者がほとんどです。しかし先述したように、離職する社員の多くは「会社に大切にされていない」と感じています。
ここで注意したいのが、「社員を大切にしている」ということが、感情論の話ではないということです。いくら大切に思っていても、行動に表さなくては伝わりません。離職を減らすために必要なのは、社員が「会社に大切にされている」と思える仕組みを、経営者が技術として持っていることなのです。
以下では、離職を減らすための具体的な取り組みとして、社員が「会社に大切にされている」と思える4つの仕組みをご紹介します。
①社員の健康を守る仕組み
会社は社員に対し「今季を乗り切る」など、短期間での頑張りを求めがちですが、社員にとって会社勤めは長期的な活動です。仕事を続けるためには社員が健康でいるための仕組みを作る必要があります。
(例)
- 健康診断は業務時間中に受診し、必ず社員全員が予約を取る
- 35歳以上は会社が人間ドックの費用を負担する
- 残業は30時間以内
- 健康経営優良法人の取得
②社員の暮らしを守る仕組み
怪我や病気で仕事ができなくなったとき、社員の生活を守る体制が整っていれば、安心して働いてもらうことができます。もちろんコストがかかるので、できる範囲で構いません。費用負担が難しくてもサポート体制の整備など、社員の暮らしを守る意思を示すことが大切です。
(例)
- 労災の上乗せ補償を用意しておく
- GLTD(団体長期障害所得補償保険)に加入しておく
- 老後について退職金や年金の制度を設ける
③社員の未来を守る仕組み
社員の将来を見据えたキャリア形成をサポートすることも重要です。自社で長く働くことはもちろん、たとえ転職しても十分に能力を発揮できるよう、社員育成について設計しておきましょう。
(例)
- 長期で働けるキャリアパスや人事評価の運用
- 教育研修に充分な時間と労力をかける
- 経営者と社員の1on1面談
④社員の心を守る仕組み
いくら働いても、心が満たされていなければ意味を感じられません。仕事面での頑張りをきちんと承認する仕組みや、健やかな人間関係も重要です。
(例)
- 評価制度を整える
- メンタルヘルスのダイヤル契約
- 有給を取りやすい環境づくり
3.社員を大切にする仕組みが離職を減らすカギ
本当に辞めてほしくない社員の離職は、社員を大切にする仕組みを整えることで減らすことができます。優良な社員は、会社が社員を大切にしていれば、与えられた分を返そうと努力してくれるからです。
会社と社員の間にこのような好循環を生み出すには、経営者が社員を大切にする4つの仕組みをきちんと作り上げていくことが必要です。1on1面談など、コストがかからず取り組みやすいものから始めると良いでしょう。
人材不足の深刻化が懸念され、採用がしにくくなるといわれている現代において、優秀な人材の離職は大きな痛手です。今こそ、社員を大切にする仕組みづくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。

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